☆〜母がつくり給いし晩飯〜☆
イカリング
おそば
肉じゃが
漬物（市販）
ご飯
発泡酒
お母さん、ありがとう♡
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深夜、疲れた身体を温めたくて風呂に入ろうとしてたら
夫があたしの電話を持ってきた。
”姉ちゃんから。”
電話を持ったまま湯船に身体を沈める。
”お母さん？”
自分の部屋へ戻るべく急ぎ足で移動しながら話してるようで
息が上がってる。
うん、おつかれさん。
”えへへ、失敗しちゃった”
あれ？上手だと思ったけど？
”ううん、１フレーズ、高音のところをまるまる落としちゃったんだ
気が付かなかった？”
ごめん、失敗したら気が付くんだけど、吹いてないなら気がつかなかった。
４楽章終盤だよね、集中力が欠けてたんだね、ごめん。
”そっか…リハの時は上手くいったんだけど”
口、ばててたのかい？ずい分気にしてた。
”いや、ここんとこ絶不調だったんだ。凹む〜（笑）”
早く帰って寝な。５月の演奏会は頑張んな。
”うん、おやすみなさい”
おやすみ…
電話をシャンプーの隣にソッと置き、湯船の中で一日歩き回った
足を思い切り伸ばす。
クレンジングを手の平に出して指の腹でソッと顔に伸ばす。
買ったばかりの口紅はバラ色なのに、唇に乗せるとなぜか
淡いピンクになった。
長女の落胆ぶりを想像する。
昨夜訴えてた極度の緊張の原因が今日の演奏を聴いて分かった気がした。
あれじゃ不安になっても仕方がないな。
３年続けて今回の演奏会を聴きに行ったが、今年が一番悪かったと思う。
オーケストラは難しいな。
素晴らしく上手な人も中にはいるというのに。
帰りの地下鉄の車両に元夫と内縁の妻が乗り合わせた。
あたし達の斜め向かいに座る二人、女性の様子がハッキリと
見てとれた。
小柄で華奢そして短髪。どうやらメイクさえしていないようだ。
ドットの薄いブルゾンが中性的な雰囲気を強調しており
内縁の妻という淫靡な印象には程遠い、まるでスカートを
はいた少年といった風情だ。
ぴったり寄り添い座る童顔の元夫。
二人に生活感はなく、とてもお似合いだと感じた。
夫におやすみを言ってからベッドに入る。
夢も見ずに眠った。
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